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独り言置き場を兼ねた『パ/ン/プ/キ/ン/シ/ザ/ー/ズ』の個人的ファンサイトです。二次創作がありますので悪しからず。
Posted by - 2025.07.21,Mon
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Posted by haruha(ハルハ) - 2008.05.13,Tue
お話更新。
亀の歩みですが、まだまだ書きます。

少尉と伍長です。
原作、こんな風になるにはまだまだですが。

拍手のお礼も入れ替えました。
ヴィッター探しものお疲れさまって感じです。

雨、いややなぁ。

おけいこ

 

「…少尉は、何かしてほしいとは絶対に言いませんね」

書類を処理する手を止めて、ふと伍長がもらす。
アリスははっとして目の前の伍長を見上げるが、
質問した当人はせっせとペンを走らせている。
質問されることは嫌いではないし、教えることは楽しい。
だが、この男はしばしば突拍子もないことをアリスに尋ねる。

 
「何か人にやってほしいと思うことはないんですか?」
「私的なことを報酬もなしに他人に頼むわけにゆかぬ」
彼女の返事に伍長は納得がいかないようで、筆を置いて顔を上げる。
アリスはさらに言葉を重ねる。

 

「私は貴族だ。市井の者よりも恵まれた立場にある。
欲したり、求めたりすることは許されない」
「あれもこれも、なんて少尉は欲張りすぎます。
もっと俺たちを頼ってください。自分
きないことは、できる人に頼むべきです」
「書類のことか」
「いえ・・・そういうことだけじゃなくて。
頼むことと欲しがることは、全然違います。
誰にも寄りかからずに生きていける人なんて、いません。
頼むことは誰にでも許されることなんです」

 

自分のことは自分で行うべきと思っているアリスにとって、
伍長の言葉は寝耳に水だ。だが、確かに伍長の指摘は一理ある。
問題は自分の至らないところを伍長に指摘されることだ。
伍長が自分よりもいろいろと知っていることは、
これまでのやり取りで嫌というほど知っている。
だからなおさら、アリスは伍長にものを教えることが楽しい。
それにしても、なぜ伍長は当のアリスさえわからないアリスのことが見抜けるのか。

 

気まずい沈黙が水を吸った海綿のようにどんどんと膨れ上がって、二人の間を埋めていく。
伍長から顔を背けることなく、アリスは細い顎を上げ、
口を真一文に引き結んでまっすぐ見つめる。
少し言い過ぎたと思った伍長は、手を組みなおして言う。

 

「頼むっていうのは、簡単なことです。母が教えてくれました。
そういう時は『おねがい』って言葉を使えばいいんです。
そしてやってもらった後には『ありがとう』と」
「『おねがい』と『ありがとう』か」
「ええ。練習してみますか?」

 

しばらくして、目の前の頭が縦に揺れる。
怒ってしまったわけではないことを確認して伍長はほっとする。
アリスはうつむいてしばらく考え込んだ後、ぶっきらぼうに言った。

 

「こっちに来い」
とんでもないことが要求されてしまって、伍長は一瞬ぎょっとする。
まさか平手を飛ばしてくるのではないだろうか。
だが、頼むことを教えた手前、頼んでいいことといけないことがあるんですとは言えない。
腹をくくって言葉を返す。

「『おねがい』、は?」「…おねがい、だから」

 もうここまできてしまったら、ビンタへの道まっしぐらだ。
至近距離からパチンコで打たれるよりかはましだと、
なんの救いにもならないことを考えながら、
腰を上げて向かいのアリスの元に向かう。
隣に立つと、さらにアリスが口を開く。

「そこに膝をつけ」
ビンタは確定だ。とんでもないことを教えてしまったのかもしれない。

 

「『おねがい』は?」
「・・・おねがい。それから・・・」「頭をなでてほしい」

とんでもないことをお願いされてしまって伍長が唖然としていると、
アリスが顔を上げて荒っぽく言う。
茹でたように真っ赤になっているのを見られるのがいやなのか、
アリスは膨れた顔をぷいと背けてしまう。

「貴様の弟妹にやっていたみたいに……。おねがい」

 

書類でもなく、手の届かないところでの作業でもなく、
最初の「おねがい」が頭をなでることとは。
後ろめたさと一抹の寂しさを感じながら、
伍長は小さな金色の頭にそっと手を置いて髪の流れを乱さないように撫でる。
二度、三度。

 

「ありがとう」
伍長の掌の下から聞こえた小さな声は、
きゅっと固まった体から発せられたものだった。


*****************************************************************

日本語だと「おねがい」と「ありがとう」でとても不自然なのだけど、
もとは"please" "thank you"で思いついたもの。
オーストラリアで幼稚園で実習していたときに知った「魔法の言葉」。

 


 


 

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