パト切手

机に放置してあってようやく思い出した。
8月22日が発売だっけ。忘れてた。
同居人に感謝。
この切手、めっちゃ綺麗。
いちいちキャラクターの名前が入っていて親切。
後藤さんの分もあればよかったのに・泣。

うちの鳥が換羽に入ったようで元気まるでなし。
かごから出してやると一応ぱたぱた飛ぶのだが、一気に羽が3，4本落ちる。
惨めで哀れなので、音楽で景気づけてやる。
あれこれためして行き着いたのがこれ。
トランス好きな鳥なんてはじめてだ・笑。

折りたたみはちょっとだけネタバレ（？）含んでます。ご注意。

大きな音を立ててドアを閉めて、まっすぐ流しに向かう。一番大きなざるを取り出して、袋の中身をざばぁっと流し込む。台所にほんのり甘い香りが広がって、シンクは赤い粒でいっぱいになる。流水の下でざるをゆすり、水受け用のボウルの上にどかんとセットして「よっこらせ」とオバチャンみたいな声をだしてテーブルの上に置く。もう一度戸棚に戻って重たいほうろうのなべを出して、布巾とナイフをポイと入れてテーブルまで運ぶ。また戻って、壁に引っ掛けているギンガムの前掛けを巻きつけながら椅子の上に体を落とす。なんとなく落ち着きが悪くて、背筋を伸ばして深呼吸する。１、２、３。よし。

 

慎重に赤い粒を一つ取り上げてヘタを取る。熟れているから、うっかりつまみ方を間違うとつぶれておいしいところが全部出てしまう。大切に。傷つけないように。真っ赤な粒たちはランプの炎を受けて元気いっぱいに光っている。宝石かビーズみたいだ。

 

もくもくとヘタをとっていると、今日一日の出来事が頭の中をぐるぐるし始めた。

嫌なことがあっても平気なのがウリなのだけど、今日のはちょっとヘヴィでずっしりと心の中居座ったままだ。

 

大鍋の中がだんだん真っ赤になってくる。甘いにおいが手から上がってくる。

いつも留守番なせいか、三課の陰口の的になることは結構ある。「役立たず」「税金泥棒」「お荷物」･･･。なにも女子ロッカーに張り紙することないのに。やっぱり新聞に載っちゃったのがまずかったのかな。でも、アリスさんは間違ってない。絶対。

 

３課は悪くない。3課はがんばってる。

じんわり目に涙がにじんでくる。今手元にあるのはタマネギじゃない。真っ赤でかわいい野いちごだ。

 

 

 

「あぁもったいない。野イチゴ塩漬けにする気か？」

いつの間に入ってきたんだろう、ここにいるわけがない人の声がしたかと思うと、右手に持っていたナイフが腕ごと取り上げられる。ひょっとすると一人でぶつくさ言っていたことを聞かれていたかもしれないと思うと、ちょっと恥ずかしい。

 

「いくらなんでもそこまでおっちょこちょいじゃないですよ」

「姐さんも守衛の兄ちゃんも市場のオッサンも心配してたから様子見に来たけど、必要なかったみたいだな」

「部下もできたのにいつまでも末っ子扱いだ」

「結構じゃないか。コーヒーは？パン屋の姉ちゃんが持ってけって」

オレルドの手には茶色い紙袋が握られている。

そういえば夕飯のことを忘れていた。

温めたパンだろうか、いいにおいがする。

 

「中身はなんですか？」

「サーモンとポテト、それから鶏ハムとキャベツだっけかな。鶏ハムは試作品らしい」

「…紅茶がイイデス。牛乳と半々の、あっつあつで」

「注文多いな。今日は特別かなえてやるか。ただし」

「ただし？」

「砂糖まぶしておいたイチゴから出る汁は俺のもの」

「ええっ！？」

面倒なイチゴのヘタ取りのあとにあるお楽しみなのに。

 

「3課はもちろん、お前もがんばってる。他の課の連中にはちょっとわかりにくいけどさ」

大きなあったかい手で目の前が覆われて、指先で前髪を軽く引っ張られた。

 

「秘・殺　パンプキン・シザーズが飛びますよ」

「アホ。サービスされといて偉そなこと言うんじゃねぇ」

わざとたててる靴音が、いつになくかわいいと思ったけど、へそを曲げられると困るので、私は作業を続けることにした。