最近の主なバイトは文章の添削。
大勢の文章を読むのは時間かかるので体力使うけど、
たまに「ところで」を「とろこで」と書いてあったりするのを発見すると、ちょっとした息抜きになります。
遭遇率が一度や二度じゃないしw
体を小さくして書き物している伍長とか、本を読んでる伍長とかいいなぁ。
新聞ってガラじゃないですね(オレルドにはぴったりだけど)。
前線経験が長いだけに、読み書きにはあせあせしてるんだろう。多分。
かわいいなぁ。
カップリングからはみ出すので、カテゴリー追加。
「ごたまぜ」ってなんだ。
ドロップ
3課の時計が7時を指す。
部屋には大男が一人、デスクに向かっている。
ふいにパタパタと足音がして戸が開き、
ステッキンが「忘れ物~♪」と歌いながら飛び込んできた。
「あれれ、伍長さんまだ残ってたんですか?
だめですよ、居残りは。早く帰れるときは帰らないと」
「報告書の直しがまだ…。今日中に片付けないと、たまっちゃうので」
余計なことを言ってしまったとステッキンは後悔する。
実働部隊の最前線にいた伍長は、字を書いたり公的文書を作ったりすることは苦手らしく、
いつもアリスに添削されて真っ赤になった紙を見ながら書き直している。
小さく背中を丸めた姿が痛々しい。
3課に来てから結構な時間がたつのに、いつまでもどこかしら居心地が悪そうだ。
ステッキンは隣にあるマーチスのデスクの椅子に腰掛けて、丸まった背中に声をかける。
「あのね、伍長さん。文章って慣れなんですよ」
「へ?」
「私、軍楽隊にいたって話、しましたよね?
私も、まとまった文章なんて書いたことなかったんで、
ここに配属されたときは毎日書き直しさせられました。
最近になってやっと定時に上がれるようになったんです」
「そう、ですか。でも曹長は何でもできる人だから…」
「それは違います!経験ですよ。
昨日よりも今日書いたもののほうが、ずっと上手くなってます。
きっと今日よりも明日の方がもっと上手いものが書けますよ」
「…そうでしょうか。俺、ずっと銃ばっかり持ってきたから」
「戦場で何していたかは関係ないです!私だって楽器ばっかり持ってましたよ。
大丈夫。諦めちゃだめです。それに報告書作るのが好きな人なんていません」
戦場に出向いていたのは自分も同じのはずなのに、
目の前の人物はずっと過去にとらわれている。
どうしてそんなに過去に束縛されるのだろう。
伍長は3課のメンバーで、ここは伍長の“Home”だから、
苦手なものは苦手と、開き直ってしまえばいいのに。
しばし、真剣な顔で筆を進める伍長の横顔をながめると、
ステッキンは自分のデスクにしまっていた銀の缶を持ってきた。
「伍長さん、手を出してください。私の『とっておき』をあげます!」
プリントされた「非常食」の3文字にたじろぐ伍長。
「大丈夫。これは賞味期限間近の払い下げ品です。ちゃんと購入しましたよ。
でも、アリスさんには内緒にしてくださいね。
食べながら仕事するなんてけしからんって怒られちゃいます。
甘いもの食べると、不思議と仕事がはかどるんですよね~」
カラカラと缶が振られて、コロリと丸い固まりが出てきた。
「あー、ハズレ。残念、ハッカがでてきちゃった。じゃ、今度は伍長さんが振ってください」
缶が手渡され、伍長は恐る恐るステッキンの手のひら向けてそれを振る。
コロン
「あぁっ、ピンク。イチゴですよ。当たりー!伍長さんすごいですねー。
ピンクはちょっとしか入ってないんですよ。運がいいなぁ。そ
うだ、伍長さん、かえっこしましょう!」
「でも、これは曹長の」
「いいんです。だって、これは伍長さんが降って出てきたものでしょ。
それにスースーするものを、今口にしたら余計に落ち込んじゃうし。
じゃ、私帰ります。あんまり無理しちゃだめですよ」
伍長の手から無理矢理ハッカのドロップを奪って口に放り込み、
彼から小さな笑いをとって明るく部屋を出た。一抹の寂しさが頭にちらつく。
3課は困っている人を助ける部隊なのに、
同僚の伍長を救うことだけはできないでいる。
(無力だなぁ…私は)
ぽつぽつ歩いていると、やおら、頭に手のひらが落ちてきた。
「随分遅かったじゃないか」
「オレルドさん。何してるんですか?」
「見てのとおり。待ってやってたの。どうした、浮かない顔して?」
「な、何でもないです。居残ってた伍長さんにドロップあげたらハッカだったんです。
それで…」
「居残りって、あいつまだ報告書にかかってのか?
いい加減慣れりゃいいのに。トロいにもほどがあるぜ」
「でも、伍長さんまじめだから」
「だ・か・ら、手の抜き方は先輩様が教えなくちゃいけないんだよ。お、先帰ってろ」
オレルドはステッキンの頭を軽くはたくと、庁舎に向かって歩き出す。
「今から行くんですか?」
「放っておくわけにもいかんだろ。せっかくの定時上がりなんだから。
飯、頼んだぞ。オニオンスライス忘れんなよ」
「私は食堂の女将さんじゃないですよぉ!」
(伍長さんに必要なものは、手の抜き方なのかな・・・?)
帝国陸軍一大きい人と小さい人のやり取りが書きたかったので。
この二人を書くと、ほんのりあったかくなれます。人徳だろうか・笑。
ステッキンにはドロップが似合います。白じゃなくてピンクの。
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