こういうステッキンが書きたい。
さくっとエロく、あまあまで俺様なオレルドとか。
多分二人は「なし崩し」だ。うん、確定。がんばろう。
なのに今日はオッサン話。
一昨日泊まった東京大塚でいっぱいくたびれたおっさん見たからか?
ハンクスがどういう経緯でこの課のボスに就任したのか、気になるところ。
ほとんど描かれてないけど、伍長を見る目も特別だと思う。
それが得体の知れないものを見る目というよりも、
共感に近いものでありますようにと妄想してみる。
春なのに、ウグイス来てるのに、寒い日の話。
『Unforgettable』
イースターが近いとはいえ、帝都の夜は冷える。
ハンクスは月明かりの力を借りて重い鍵を開ける。
真っ暗な家には積もった埃と滞留した空気。
明かりに手を伸ばしたが、手を引っ込める。
この明るさだし必要ないだろう。
多少暗かろうが、外套を着たままだろうが、咎める者はこの家にはいない。
寒さしのぎの一杯を求めて、戸棚の酒瓶に手を伸ばしたとき、
ふとその隣の写真たての中の少女と目が合った。
少し緊張して、まっすぐこちらを見つめている。
その隣にはよく似た面影の女性。そして後に立つのは今よりずっと若い自分。
(5年か……。息災なら、オレルドらとかわらんな)
自分を除く二人は、いまや写真の中の存在である。
二人は大戦時に列車事故でこの世を去った。
愛する家族を失って以来、ハンクスは戦後という長い「余生」を送っている。
娘は生化学を専攻するために上級学校へ進学が決まっていた。
たびたび送られてくる手紙には、「人の回復力を補強できるような研究がしたい」
「そうすれば、戦場に出ている家族の心配が減るから」と綴られていた。
情報戦を専門とする彼にはわけがわからず、ただ結構なことだとしか返事ができなかった。
酒のグラスを片手に安楽椅子に腰を下ろし、しみじみ写真たての中の彼女を見つめる。
ティーンエイジャー特有の、ガラスだまのような瞳。
ふと、ある化学者の顔が頭をよぎる。
自らの好奇心のみを信じて人体実験を手がける女、ミュゼ・カウプラン。
もし娘が学問に携わっていたとして、やはり彼女も倫理も人道もない道を、
興味のままに進んでいただろうか。
歴史に「if(もし)」は許されない。
だが、カウプランとオーランド、実験者と被実験者の両方を知り、
かつ相反する感情を目の当たりにしている現状、
そして娘がカウプランと同じ化学者の道を希望していたこと。
この二つの事柄は、何事も理詰めで推測してしまう彼の癖を刺激するのに十分すぎる。
娘も彼女のように、伍長のような人間を苦しめる立場になっていただろうか。
否定したい。だが、無理な話である。
戦争はあらゆる枠組みをゆがませ、殺人・窃盗・裏切り、平時であれば許されない行為を正当化する。
空けてしまったグラスをもう一度満たそうと瓶に手をかけて、ハンクスは手を止める。
腰をかがめて棚の下段を覗き、物を出し入れし、ようやくスキットルを取り出す。
大戦が産んだ大きな過ちに、今もなお苦しめられているあの青年に。
「余生」というにはあまりにも長い年月を過ごしていかねばならないあの青年に。
せめてもの励ましと、罪滅ぼしを兼ねて。
鈍く光る銀色の容器に中身を詰めると、ハンクスはもふたたび街に出る。
行き先は、あの橋の下である。
一応続きがあります。ハンクス×伍長です。ただし、Hはなしです。ごめんなさい。
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