私を白塗り芝居の世界に引き込んだ遠い知り合いのHPを見て、ちょっとだけ奮起。
呑めない食えない職業はつらいけど、妥協するとつまんないよねぇ。Iさん。
ベイサイドの工場跡っていう会場も素敵やからがんばってほしいです。
使えるようにセッティングするのは大変やけど。
というわけで、なんだかんだ刺激された結果が、昨日アップした話の取り下げ。
わかりやすいぜ・自分。
昨夜CD(「こち陸」)流して半分頭が留守だったたので、今日はおとなしい環境で修正作業。
もっとも書き手が若葉マークなんで、できあがりはたいしたことないんですが。
砂糖甘いのはいつものことですw
マトリョーシカ
昼休みはあと30分もあるというのに、隊長はデカブツを連れて資料探し、
マーチスはあいかわらず技術班に駆り出され、大尉は食堂。
他所の課の連中に声をかけるのが面倒になったオレルドが、
新聞を顔にのせて長椅子に寝転がっていると、
ステッキンが上機嫌でデスクを片付けはじめた。
彼女の机の上の模様替えはもはや恒例である。
普通は写真たてくらいに控えておくものだろうが、
ステッキンの机は人形だったり、絵葉書だったりいつもにぎやかい。
どこから見ても紛れもない「女の子の机」である。
もっともここはオレルドとマーチスという「二大末期症状」を抱えている。
書類一枚置きっぱなしにしない彼女など誰も咎めはしない。
ステッキンの音一つはずれない歌が小さく響く。
彼女は机の下から鞄を取り、中から赤い塊を取り出す。
たぶんまた市場で買ったガラクタだろう。
オレルドには不用品にしか見えないものが、「カワイイ」という。
「綺麗」ならまだしも、女の「カワイイ」だけは理解できない。
すぐそばから観察されていることに気づくことなく、
ステッキンは赤い塊を大事そうに立てることに夢中になっている。
どうやら人形らしい。位置や角度をあれこれ考えた挙句、
やおら人形を縦半分に割り始めた彼女に驚いて、オレルドは起き上がった。
「おい、せっかく持ってきたのに壊すのかよ?」
「あ、起きちゃいました?ふふーん。これね、ちょっとしたからくりがあるんですよ」
得意げに言いながら、ステッキンは赤い人形を手にオレルドの向かいに座り込んだ。
「驚きますよ~」
「いいから早く教えろよ」
「だめだめ。オレルドさんにはワクワクがない!つまらない人ですね」
「ほっとけ。休みが終わっちまう」
ステッキが人形を縦半分に割ると、中から同じような人形がでてきた。
その中にはまだ人形が入っていて、さらに小さな人形が次々と顔を出す。
全部で6つ。
「次々出てくるの、楽しいでしょ?共和国のお人形です」
「へぇ~。珍しいもの見つけてくるじゃないか。
ちょっと野暮ったいけど。お前そっくりだし」
「こんなにまん丸くないですよ!それに私は6人もいないし。
そんなことより、こうして並べてみると家族みたいですね」
ステッキンにつられて一緒に人形を一列に並べてみる。
6体の人形は微妙に異なったデザインほどこされている。
「大尉がお父さん、マーチスさんがお母さん、
アリスさんと伍長さんと私がこの3つ。で、一番小さいのがマー君。
3課って家族みたいですね」
ステッキンが人形を指しながら喋りだす。
人形は6つ。3課は6人と一匹。
「…で、オレは?」
「オレルドさんは…『おばあさん』かな。だからこの中にはいません」
それはあんまりだ。もっとも「この人形」と言われても困る。
オレルドに目もくれず、ステッキンはなおも続ける。
「いつも『オレには関係ねー』ってそっぽ向いてるのに、
なんだかんだみんなのことを気にしてるじゃないですか。
お父さんやお母さんは、いつでも助けてくれる人。
だったらここ一番って時に手を貸してくれる人はおばあさんですよ。
オレルドさんって、ただの自分上手じゃないんですよねー」
「おばあさん説」には反論したいが、自分上手説に異論を挟む余地はない。
彼女のとまらないおしゃべりを聞き流しながら、
一体一体、まっすぐ彼女の方を向かせる。
「ほれ。20年後のステッキン曹長と5人の子供達。
おんなじ顔に囲まれて、彼女は幸せに暮らしましたとさ」
「おとなしいと思ったら。オレルドさんひどい!すねちゃったんですか」
「お前のわけ分からん説明聞いてると、理解するまでに時間かかるの。
昼休み終わっちまったじゃないか。仕事だ仕事」
「おばあさんがイヤなら、おじいさんでもいいですよ。
でもおばあさんの方が面倒見よさそうだし」
「うるせぇ。好きにしろ。うるさいのが戻ってくるぞ」
ステッキンの鼻歌は、間違っても8ビートじゃないはず。
日本のものはともかく、古い歌あんまり知らないのでケルト民謡で補完。
あ、新聞かぶると昼寝はかどります(実証済)。
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