ドイツで食した味がほぼ再現され満足。
かの国で口にした数少ないうまいものなので、思い入れはひときわ。
しかし、血まみれになる調理の現場は伍長さんに見せられない。
食べることに熱心なカップルは、見目麗しい。
南瓜世界ではオレルドとステッキン。
一方、少尉と伍長はその逆。無頓着間違いなし笑。
以下、小話を一つ。寸止めですが。
コーヒーよーし。ご飯よーし。天気よーし。
ステッキンは鼻歌交じりに、朝の用意を指差し確認する。
だが、問題は一つ。寝起きの悪いオレルドを起こすことである。
蹴り飛ばそうかと思うが、非番の日にこの上なく幸せそうな彼を邪魔するのは申し訳ない。
しかし、今日の食卓には二人の好物であるレバーペーストがあるのだ。
どうせなら二人で取り合いしながら食べたい。
真っ白なリネンのかかったベッドから、依然安らかな寝息があがっている。
(きれいな顔…)
鼻筋の通った顔にかかった一房のやわらかい髪の毛をそっとのけてみる。
(寝ているオレルドさんはいいなぁ。イジワルしないし)
息がかかるほど近づいても起きないオレルドに気をよくしたステッキンは、長いまつげにそっと息を吹きかける。
(そよ風が、オレルドさんの目元を通り過ぎていきました…って何しているんだろ。私)
いつも見下ろされるだけの相手を見下ろしていること、
これだけ近い距離にあることで、うれしさ2割増しである。
(このちょっと尖った口がかわいいなぁ)
もはや目的はオレルドを起こすことから、別のことへ移りつつある。
口元を指先でそっとなでていると、不意に指がオレルドの口にくわえられてしまう。
(あちゃー…怒ってる?)
恐るおそる顔に目をやると、オレルドはばっちり目を覚ましている。
咥えられた指は腕ごと捕えらえている。
「なーにやってんだ。人様の寝ているところに」
「お、起きてたんならそういってくださいっ」
「夕べ大切にしすぎましたかねぇ。曹長殿?」
いわれたことの意味をぼんやり考えているうちに、ベッドに引き入れられてしまう。
「ったくタフだよな。朝っぱらから人様にちょっかい出せるなんて」
「もう朝じゃなくて昼前ですっていうか、何に言ってるんですか?
私、軍楽隊で早起きがしみついちゃっ…お休みなんだから出かけましょうよぅ…」
ステッキンの休日はまだ始まれそうにない。
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