↑ 我が家に停泊中の野鳥の話。
同居人の部屋の雨戸の戸袋にムクドリが巣づくりしていて、もう巣立ち寸前。
営業時間は朝6時から夜8時まで。出たり入ったり。
ピーチク・ピーチク・・・。
折りたたみは先週はまった「大きすぎてぶかぶか」にインスパイアされたもの。
変に小さいのもなんかかわいい。
部屋に入ったウェブナーの目に、会議用テーブルの上に無造作に放り出されたカーキ色の上着が飛び込む。袖には帝國軍中、いや、ネビュロ中を見渡してもなか なかお目にかからないユーモラスな南瓜と鋏のエンブレム。傍らに開発部あての書類が置かれている。上着の持ち主がどういう経緯でこれを放置していったのか が手に取るようにわかって、つい口元がゆるむ。おおかた今頃右手にドライバーでも握って車輪の下だ。書類を出しにきたはずが。人がいいにもほどがある。そ こが最強の魅力ではあるんだけど、とため息をつきながら、ウェブナーはテーブルに腰を下ろして放置されたそれをそっと手に取る。ずしっと制服特有の重みが 手にかかる。ところどころ擦り切れた内ポケットの名前の縫い取りをゆっくり目でたどっているうちに、ふと心にあることが浮かぶ。一瞬ためらうが、好奇心と いう小悪魔に勝とうとするのは無駄な試みだ。良心の呵責とはしばらく決別することにする。
袖を通すと手首が出る。タッパ(身 の丈)が違うのだから当然だ。前がとまらないのは予想の範疇。微妙に長い裾が妙に気になる。自分の持っているタイプもそうだが、とにかく制服ってものは窮 屈だ。これで前線に立つことを想像するとげんなりしてきて、急に興味が薄れて羽織っている自分が嫌になってきた。喉元がホック止めになっていることを確認 すると、脱いで手近な椅子にかける。
勢いよく持ち主が飛び込んできたので、いらっしゃいとウェブナーは闘牛士よろしく上着を広げてひらひらさせる。
「さぁどうぞ、bumbino(ぼっちゃま)」
マーチスは動かない。一瞬ぽかんと口を開けたと思うと、次第に顔が険しくなる。
「どうした?せっかく着やすいように広げて差し上げてるのに」
「何か考えてるでしょう?」
「いつからあんたはジジムサイ猜疑心の塊になっちまったんだろね。
あぁそっか。兵器局のサービスなんて受け取れないと」
「あのですねぇ」
眉根がきゅっと寄る。「もう十分」のサインだ。
「馬鹿だね。なぁんにも考えちゃいないよ」
ほれ、と軽く上着を振ってやると、どうも、といいながらおずおずと袖に腕を通していく。
「ヒトの好意ってのはさ、とりあえず素直に受け取っておくもんだよ」
「悪いね、ウチの連中につき合わせて」
「ボクの勉強にもなるので・・・・・・」
「さ、時間だよ」
ドアの方へ回れ右させて、ポンと両肩をたたくと、されるがままになっていたマーチスはバネ仕掛けの人形よろしく歩いていく。
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