来月の本誌の展開が気になって仕方ないので、
うだうだ語りたいのですが、こちらもタイムアップ。
ほぼ日日記状態を打破すべく・w、以前書き溜めていたものをアップです。
自分は二度寝を愛してやみません。
二度寝の幸せ
少しだけ開けた窓から冷たい空気が入り込んで、吐き出したばかりの煙をもてあそんでいく。それはついでに早朝特有のきな臭い香りを運んできていて、思わず顔をしかめる。大方職を求めて帝都に出てきた野宿者たちの焚き火だろう。木っ端を燃やしているだろうその臭いはどこか硝煙と似ていて、戦場を思い起こさせる。誰もが「停戦後」を受け止めかねて立ち往生している。大きく繰れば、あたしもその一人だ。
時計は5時半を指している。寝付いたときには日を越していたはずだから、寝不足もいいところだ。耳に入ってくる安らかな寝息が腹立たしくなってつい寝床を抜け出してしまった。起床喇叭から解放されて3年たつというのに、時折、夜明け前に目を覚ましてしまう。ご丁寧に喇叭の前であったりする。同衾の証拠隠滅のための時間だ。不毛な一日の終わりにクールダウンよろしく勢いで誰かと寝床を共にすることは少しも珍しいことではなかった。ほかに楽しみがなかったことだし、やり場のない憤りを抱えて日々を送っていた自分たちにとって、それはしごく自然なことだった。別れを惜しむでもなく新しい日を迎えて、そのうち転属がかかる。ほとんど一回きりの関係。「もう一度」なんて言葉を口にするようになったのは、そんなに遠いことではない。
「どうしたの?風邪ひくよ」
入り込んだ外気で目を覚ましたのか、溶けたような顔がふらふらとやってくる。
「あぁ、寒かった?」
腰に腕を回して彼を引き寄せて、頭をぴたりとくっつける。エンジンを切ったばかりの戦車の暖かさもいいけれど、恒常的に暖かいヒトの体温は麻薬だ。印象こそひよひよだけど、こうして触れると骨格はすでに完成されたものだとわかる。
「ねぇ、マーチス。二度寝っていいよね」
「え?あぁ、そうですね」
「これ吸い終わったら戻るからさ、ベッド暖めといてよ」
「なんだかよくわからないけど了解」の意だろう。ふわりとあたしの頭に手を置くと、彼はもといた場所に戻っていって小さな山をつくる。
あたしの本当の出番は、あの子たちの「仕事」が終ってからだ。
それまでもう少し、「余韻」とか「2度目」を楽しませてもらおう。
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技術屋の戦災復興は政治が安定してから、というのは、
某技術屋さんのエッセイから思いついたネタ。
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