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独り言置き場を兼ねた『パ/ン/プ/キ/ン/シ/ザ/ー/ズ』の個人的ファンサイトです。二次創作がありますので悪しからず。
Posted by - 2025.07.21,Mon
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Posted by haruha(ハルハ) - 2007.12.23,Sun
クリスマス(と開き直ってみる)仕様SS第2弾。


アドベント・カレンダーが好きです。
小窓をあけると毎日違うチョコレートが出てくるやつ。
ドイツではおもちゃが出てくるらしいです。
日本でも商品化したら絶対喜ぶ人いると思うのですが。


右肩と大腿を固定されてベッドに横たわる男は
たいそう屈強そうな体つきをしているのに、
なぜか痛々しいという言葉しか出てこない。
 
伍長のはじめての入院のときに「二度と見舞いには行かない」と宣言したアリスだが、
ほかのメンバーに諭されてしぶしぶ病院に赴いた。
ふと和やかにやり取りしていた言葉が途切れて、沈黙が流れる。
ようやく打ち解けてきたのにもかかわらず。
 
「少尉、もうじき消灯時間です。
今日は炊き出しの支援だったんですよね。
寒い中、ありがとうございます」
 
くぐもった声がやんわりと切り出した。
暗に帰れといっているのだろう。
本来なら夕食の介助にくるべきところを、消灯時間前になってしまった自分が悪い。
せっかくマーチスが気を利かせて本部への帰り道に車を寄せてくれたのだ。
許される限りはここにいたい。理由はよくわからないのだが。
 
「伍長、気になっていたのだが」
「なんでしょう?」
 

問えば答えが与えられる。
しごく単純なことなのに、それだけで心が満たされる。
安心して言葉をつなぐ。
 
「あれは、何だ」
指先で窓辺にかけられた奇妙な飾りを指す。
細い輪の周りに色とりどりの小さな箱をぶら下げたそれは、
シャンデリアのできそこないのようにも見える。
 
「毎日一つずつ空けていくカレンダーだそうです。
なんでも12月1日からクリスマスの日までの特別なものだそうですよ」
「降誕節のカレンダーか。
それなら私も子供のころ楽しみにしていたが、窓がいっぱいついた絵だったぞ。
こんな箱のものは初めて見るな」
「曹長のお郷(おくに)では箱らしいです。俺、そういうの、よくわからなくて。
毎日違ったメッセージの書いてある紙と、
いろんな飴やチョコレートが出てくるんです。面白いですよ」
「なんだ、ステッキンが持ってきたのか」
「ええ。手作りだそうです」
 
心の中で舌打ちする。
そもそもここに来ることは予定外だったので、クリスマス・イブなどとんと頭になかった。
コイツは一日中ベッドに縛り付けられて日々を送っているのだ。
さぞ退屈だろう。少しくらい気を利かせて暇つぶしのものを差し入れるべきではなかったか。
上官として至らない自分のふがいなさに腹が立つ。
 
「少尉、24の箱を取って中身を見せてくれませんか?」
「あ、あぁ」
「オレルド准尉が取り付けたから、高いところで申し訳ないんですが」
「かまわぬ。お前は動けないんだからな。私が取ろう」
「ここを踏み台にしてください」

 
気を取り直し、言われるままにベッドにあがって箱に手を伸ばしたが、
かろうじて手を掠めるだけだ。オレルドめ、なんて高いところに取り付けたのだ。
 
「すみません。俺が動けないばっかりに」
「いや、待て。もうじき・・・あっ!」
 
やっとの思いで箱を手の中に納めたが、勢いづいて紐ごと引きちぎってしまった。
反動で倒れそうになる体を伍長と反対側に立て直すだけで精一杯だ。
いくらなんでも怪我人の上に倒れるわけにはいかない。

 
「ケ、ケガはないですか?」
「それはない。ただ・・・。すまない。
せっかく箱をぶら下げたままにしていたのに」
「とってくれる人たちがそのままにしていただけなんで、
気にしないでください。箱の中身は何ですか?」
 
赤い色紙で「24」と記された黄色い箱の中からコロリと出てきたのは、階級章だった
細かい傷があちこちにあって、端もギザギザだ。ピンの部分も正規のものとは違う。
黒の塗りの部分がきれいに光っている。相当修理されている。
だが、どうみても自分が着任当時の伍長につけてやった、
そして前の任務で傷だらけになった伍長の制服についていた階級章だ。
黙って伍長の無事な方の手をとって、表を向けてそれを置いてやる。
 
「階級章・・・」
「先月の終わりはえらく開発部の人間が
休み時間にステッキンと話し込んでいたな」
「直してくださったんですね。曹長と、開発部の人が」
「こんなところに縛り付けられていてよい存在ではないのだ。
お前は。早く戻ってこい」
「すみません」
 
ピンをぎゅっと握る大きな手のひらを見ていると、
「よくわからない気持ち」に胸を締め付けられて、思わず自分の手をそこに重ねてしまった。
分厚くてささくれだった、自分の両手にも余りそうな大きな手は、とても温かい。
 
「お前は伍長だ。パンプキン・シザーズの」
自分の耳たぶが熱を帯びてくるのを感じながら、
重ねた手に向かってアリスは語りかけた。

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