友人とJポップの歌詞の中に描かれる「love」についてひとしきりしゃべる。
とりあえずloveは恋人シチュにしか使えないモチーフではない、と結論。
ジョン・レノンが人類愛を歌ったように、車とか、物語中のキャラとか、
恋人や家族だろうが、みーんな並列してloveのモチーフで歌えるではないか、と。
魚釣と同じくらい君が好き~という歌…奥田民生くらいかなぁ。
「私と仕事とどっちが大事なの?」と尋ねて「両方」という返事が返ってきたら、
仕事並みに大事にしてもらってるのねと納得してくれる人。
・・・理解してもらうのは難しそう。
たとえばこんな感じ。
「ひだまり・ひるさがり・さるさがり」
帝国にようやく訪れた春。
人びとは待ち焦がれたように、いっせいに野外に食事を持ち出して楽しむ。
それは、オレルドとステッキンにとっても同様である。
しれっと手が籠に伸びてきて、サンドイッチの最後の一切れが宙に舞う。
その形跡を二つの丸い目が追う。
「ひどい」
オレルドは口元に運ぶ作業をとめる。
「それ、私のサーモン!」
「ん」
否定も肯定もしない。籠にあったこの一片は、「一応」ステッキンの分である。
留保がつくのは、それをこれからオレルドが口にしようとしているから。
「作ったのもオレ。つめたものオレ。ならば、このひと切れはオレルド様への感謝の気持ちとして」
「サーモンとパンを買ってきたのは私です!同じだけ働いてるんだから、
公平に分けてください。配給と一緒ですよ」
無理もない。サーモンの燻製は貴重品である。彼女は「おたのしみ」に残していたのだ。
「どーせつくべきところにつかないんだったら、恵んでくれてもいいじゃないか。チビッコ?」
「失礼ーな。セクハラ反対!必殺パンプキン・シザーズをお見舞いしますよ」
「受けてたつぞー」
明後日の方向を向いて気のない声で返すオレルドに、ステッキンの機嫌は悪くなる一方である。
「私とサーモン。どっちが大事なんですか?」
「両方」
「・・・・・・」
オレルドはニコリとして、件の一片をステッキンに差し出す。
「お前の分。心して食えよ」
(サーモン並みに大事ってのはだめかね・・・)
「オレルドとサーモン、どっちが大事?」と聞けば、彼女は間違いなく「両方」というはず。
「そんなの天秤にかけるものじゃありません!」と怒る前に。
Powered by "Samurai Factory"